1998/11/12


競馬の予想色々

あやしい、怪しすぎる競馬の予想屋。



場外馬券売り場で見かけた怪しい予想屋

怪しすぎる予想屋(第1回)

JRAのコマーシャルを見ても分かる通り、競馬は今や市民権を得たレージャーとなっている。しかし、競馬社会の裏側に暗躍する悪者もいることを忘れてはならない。競馬はお金が絡む欲望のレジャーであるのだから・・・。 とある、某新宿の場外馬券売り場。1人の浅黒い男がだみ声を張り上げて、人を呼んでいた。提督は、この男を人目見るなり思い出した。あの、予想屋である。提督はこの男を去年の秋、渋谷の場外馬券売り場で目撃している。と、いうよりこの男の話を聞いている。そう、それは去年のマイルチャンピオンシップの前日の土曜の事。提督は渋谷の場外馬券売り場の近くをうろついていた。場外馬券売り場へ向かう細い坂道にこの男はいた。背後の大きな立て看板に、マイルチャンピオンシップの出場馬を書きたて、こう言っていた。「さあ、明日はマイルチャンピオンシップだ。ここにはG1馬が何頭出ている? G1を勝ったことのある馬は超一流馬だ。それがこんなに出ている。何が来ると思う。 俺の話を最後まで聞いた奴にはマイルチャンピオ ンシップの予想をただで教えてやろう。いいんだ、俺は儲かっているんだから。」 へー、気前の良い予想屋もいるもんだ。思わず足を止める提督。男は透明なビニールケースに包まれた馬券を取り出した。「いいか、よく言う奴がいる。予想や、そんなに予想に自信があるなら、自分で買えば良いだろう。もっともだ。俺は買っているよ。明日のマイルチャンピオンシップの馬券だ。」 提督は覗きこむようにそれを見てみた。確かに翌日のマイルチャンピオンシップの前日投票券である。1枚1点。それが10枚そこにはあった。金額は5万円づつ。ただし、買い目は色紙で覆われて見えなくしてあった。 「どうだ、50万だぞ。おまえら貧乏人はこんな買い方は出来ないだろう。今から話す俺の話を信じたら、今日からはお金の心配なんてしなくていいぞ。金儲けしたい奴、借金のある奴は俺の話を最後まで聞け。すぐに返せるようになる。」 本当かよ。まあ、話を聞くのはただ。提督はかなり前に身を乗り出して、彼の話を聞き始めた・・・。(第2回へ続く)


怪しすぎる予想屋(第2回)
 

予想屋は、こう切り出した。「いいか、おまえら、俺の話を聞いたらすぐに会社に辞表をもってけ。まともに働くのが馬鹿らしくなるから。」 たいした自信である。「おまえら、この雑誌知っているな。」 予想屋がそういって取り出したのは、ギャロップ。まあ、競馬をやっている人で知らない人はいないだろう。そのギャロップには付箋が付けてあり、そこを開くと、ある広告が載っていた。グリーンブックの広告である。提督も噂に聞いたことがある。そのグリーンブックを利用して競馬を行うと、かなりの確率で当るらしい。 予想屋はまくし立てる。「ギャロップと言えば競馬の世界では一流誌だ。ここにグリーンブックって、あるだろう。この広告にグリーンブック責任編集者の名前が記載されているな。XXXXと書いてある。俺の名前もXXXXというんだ。グリーンブックは俺が編集している。」 予想屋がそう言うと、弟子らしい若い男が新聞紙に包まれた物を、予想屋に手渡した。予想屋が包みを開くと、グリーンブックらしい小冊子が数 冊出てきた。「これが、グリーンブックだ。」予想屋はそう言うと、グリーンブックを回りの見学者に手渡し始めた。提督の手元にも一冊。随分薄い本だ。A4版。何回か開かれたような折り目がある。新品ではないらしい。予想屋はこう続けた。「いいか、今日の東京1レースは何頭立てだった? 12頭立てだ。その本の競馬の12と所を開け。そこに色々な数字が書いてあるだろう。今日の1レースの出目は何だ? 馬連で4−8、枠連で4−6だ。4と6を足して10だろう。表の頭が10の所を見てみな。そこに数字の組み合わせが3こづつ、横に並んでいるだろう。その3つの数字の組み合わせが、レース毎の予想になっている。2レースの結果は5−8だった。それははずれだ。3レースは2−7だ。ほら、馬連で当っているだろう。4レース、5レースもはずれ。でも6レースは当っているよな。さっき終った7レースはどうだ? 7レースも当っているだろう。確実に3回の内1回は当るよ。」 提督は次の8レースの所に目を移す。しかし、そこから先にはしっかりと紙テープが張られ ていた。 予想屋は続ける。「どうだ、おまえ達、この本がほしいだろう。この本の定価は本当だったら、12万円だ。高いと思うだろう。でも、当るんだから。高いのは当たり前だ。しかし、おまえらが今、12万円を持っているとは思わない。どうだ、2万ならほしい人はいるか?」 何と、5人ぐらいが手を上げるではないか。「5人か。今日は10冊持ってきた。後、5人早いもの勝ちだ。」 その声につられてか、更に5人がばらばらと手を上げた。提督はびっくりである。いいか、良く考えて見ろ。どう考えてもこれはインチキだ。(第3回、最終話へ続く)

 
 怪しすぎる予想屋(第三回 最終話)

 だって変だろう。おまえの予想は出目論だろう。1レースの結果から、1日のレースの予想をする。おまえは最初、明日のマイルチャンピオンシップの予想を教えると言ったよな。何で明日の1レースが終ってないのに明日のレースの結果が分かる! おまえの理論に反するじゃないか!? それに、おまえが買ったという馬券だって変だ。何で1点づつ10枚買う! 本当はすべて違う目を10点買ってんじゃないのか! そして運良くその内の1枚が当ったら、来週はその1枚を客に見せて、「ほら、当っているだろう!」 と言うに違いない。それにこの本が本当にグリーンブックなのかどうかも怪しいぞ。全国誌に広告を掲載すればいくらお金がかかると思っているのだ。そんなお金を持っている会社が、露天で責任編集者自ら商いをするとは思えない。この本の予想だって当っているとは言い難い。だって過去のレースの検証をしただけで、実際には1レースも当ててないもの。これは恐らく数10のパターンを 前もって容易しておいて、弟子が演説が始る前にもっとも適したパターンの本を持ってきたとしか思えない。 どう考えても胡散臭い。世間の目は騙せても、この提督の目は騙せない。提督だって、競馬道15年以上だ。賭けずに見ていただけの時代から考えれば20年近いぞ。そういう事をやっていると、馬の神様のばちが当るからな!
(でも、提督は女の人にはよくだまされます。 ・・・これが・・・、人生だよなぁ。)






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