1999.9/14

 ニャミ&ミミの導きでポップンを知り、ポップン2で音ゲーの世界へと足を踏み入れた私にとってこの日は忘れ得ぬ日です。
 そう、家庭用ポップンミュージック2の発売日ですよ!
 他にキラーソフトもありましたが、もうドリームキャストはポップン専用機の勢いで購入しました。
 ソフトと一緒に家庭用ポップンコントローラーも購入! 外箱に描かれたショルキーとミミがなんともマヴしいです。
 速攻で帰宅、もどかしくソフトのビニールを取りました。電源ON! コントローラーセットOK!
 Let's Party POP'N MUSIC!

 ゴッ。
 「ドゥフッ!」

 私の指はあらぬ所を叩いていました。……そう、専用コントローラーはあまりにも小さいのです。
 そんなのプレイ前に気が付けや、って声が聞こえてきそうですが、いざ叩いてみるまでは甘い夢を見続けていました。「やってみれば結構いけるかも」と。
 いや、もう全然いけてません。馴れる頃には、すっかりピアノ打ちになっていました。

ザクとシャア専用ザクくらい違う この画像を見て下さい。もう三倍くらい大きさが違います。
 こんなちんまりとした叩き方しか出来ないのでは、アーケードで知った「叩く楽しみ」を再現できません。右に、左に手を振り、全身でリズムを刻んでこそポップンです。
 指先でちんまりと叩いていたのでは、楽しさ半減。練習用にしても、ボタンの間隔が違ってきてしまっているので、ゲーセンでのプレイに練習の成果が100%反映されるとは思えません。

 「クッ、このコントローラーでは話にならん!」
 ここで独裁者風に家庭用コントローラーを「バキィ!」とか握りつぶすと臨場感(何の?)バツグンですが、勿体ないからやりません。
 「必要だ……アーケードと同じコントローラーが! 真・ポップンコントローラーがッ!」


 1999.10/5

 私は早速、秋葉原のパーツショップへと繰り出しました。
 乗り越えるべき問題は「ボタンの間隔を再現する」という一点に絞りました。アーケードゲームでよく用いられている押しボタンを使用し、ドーナツ型のスポンジを台とする。ボタン部分は発泡スチロールの半球を用いて、スポンジの上に乗せる。こうすれば一応、ゲーセンでの手の動きを再現できるコントローラーが出来る、と考えていました。
 ……スカスカのコントローラーではありますが、安く完成させることが出来れば御の字です。

 不意に店頭で、見覚えのあるボタンを発見しました。これは……『ビートマニア』で用いられているボタンです。『パカパカパッション』用の平べったいボタンも発見しました。実にさまざまなボタンがあり、本来の目的を忘れて、しばらくパーツショップを散策しました。
 その時です。赤い……赤い半球が。
 「ああぁ! ホントに売ってるし!」
 見間違えるはずもありません。それは間違いなく『ポップンミュージック』使用されている赤いボタンでした。吸い寄せられるように手に取る。3600円……税抜きであろう。ちょっとしたCDアルバム一枚分の値段だ。
 沈黙思考。3600×9……暗算できないし。退くか、退かざるか。
 「ととととりあえず一個買ってまえー!」
 お店のお姉さんは、当たり前のように領収書をきってくれました。
 無論、領収書には個人名が輝いています。

スイッチ有 部屋に転がる一個のボタン……本来ゲーセンにあるべきものが、部屋の真ん中に転がっているというこのシュールな空気。
 裏返して転がしてみる。プラスチック製のボルトと板で、筐体のパネルを挟み込むように取り付けるらしい。スイッチは最下部にあり、メンテナンスも容易。よく考えられている。
 もっとバラバラにしてみたくなる。プラスチックのボルトをどんどんねじっていくと、スイッチが外れた。スイッチには点灯用の豆電球が付いていた。点灯させることは、おそらく無いだろう。

スイッチ無し なるほど。二枚の皿の間にあるものは「空気」と「スプリング」のみ。空気抜きの穴もある。極限まで簡略化された構造だ。耐久性が求められるものは、単純に作るべきである。美しい構造である。
 さて、これからどうしよう。このまま机の上に転がして、シュール系のオブジェとして使用するのはどうかと思う。
 あと、八個。一つCDアルバム一枚。
 板の上で回転する九枚のCDを叩きまくる妄想にとりつかれる。
 心の奥底ではもう結論は出ているのだが、最後まで私は目をそらしていた。


1999.10/22

九個勢揃い 「ぶはははははっ! 税金払う立派な大人万歳! そうだよそうだよ、買ったときから一人では寂しそうだったもんな〜、ン? そうであろう?」
 きっかけなど些細なものである。
 洒落にならない金額の領収書を手にして、私は部屋で狂喜乱舞した。笑い続けていないと、本当に何かに追いつめられてしまいそうである。

 陽の光を浴び、まぶしく輝くボタン達を、私は今でもよく覚えている。
 (つづく)

※ボタンの値段は当時のものです。購入する店舗や、別メーカーのボタン(同型)はもう少し安いようです。
 よく調べなきゃいけないね。ギャフーン!

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