アクリルの開口寸法を間違える、という致命的なミスに見舞われるも、その問題さえクリアしてしまえば後は組み上げるばかり。材料はもう寸法通りにカットされているので、『加工』という手間を省くことが出来ます。そう、もうここからはプラモデルでも組み立てるような感覚で作業を進められるのです。そう考えると、多少は気が楽になりました。とにかく、もう金額云々にもう目を向けまい、と決意してから組み上げの準備を進めました。
休日に、一気にやってしまおう。そう思い朝から作業スタート。
木工用ボンドとゴム系接着剤、以前ホームセンターで購入した格安の電動ドリル。このドリルは、実にいいものでした。一度使ってしまったらもう手回しドライバーでちまちまネジなんか締めていられなくなりますね! もっと早く買っておくべきでした。
準備が整ったら、アクリル板に貼り付けられている保護シールを一気に剥がします! 傷一つない均一な面が、なんとも気持ちよい。白いアクリル板と透明なアクリル板の、向かい合う面に傷やゴミを付けないように気を付けて作業します。本当は組み上げるまでは接着剤を塗布する面だけ保護シールを剥がせば良いのですが、勢いで全部やっちゃいました。てへ。
右の画像は、借り組みしたときの画像です。
上から透明アクリル3mm(開口部88mm)、白色アクリル5mm(開口部100mm)、ベニヤ5mm(開口部100mm)、外枠の角材、となっています。積層構造であることが一番よく判る画像です。一番上の透明アクリルに、ボタンが回転しないように設けられている「ポッチ」をはめるための切り欠きがあるのが見えるでしょうか。これはカッター、ヤスリ等で地道にゴリゴリと作りました。
全てのボタンがはまることを確認したら、接着、ビス止めの作業に移行します。木と木の接着には木工用ボンドとビス、木とアクリルの接着にはゴム系接着剤を使用します。コツはただひとつ、思い切りよく接着面全体に接着剤を塗布することです! 細かいところですが、接着面に隙間を作らない、というのは頑丈に組み上げるための鉄則です。ここで面倒くさがって本体の強度に『隙』を作るくらいなら、ここで全力を尽くしておくことをオススメします(誰が真似するのかわからんが)。
ベニヤに角材を貼り付けたら、生乾きのうちに電動ドリルで一気にビス止め! 5cm間隔くらいでビス止めしていきました。接合面から、多少接着剤があふれますが、これはまんべんなく行き渡っている証拠です。はみ出た分はふき取り、さらに内部を角材で補強します。
さて、ここで一休み。あとは接着剤が乾くまで、重石を乗せてじっくりと待ちます。ゲーセンに行ってポップンでもしてきますかね。
ついでに秋葉原で買い物もしてきました。ゲーセンで一番よく見かける、直径30mmのボタンを二つ買ってきました。これは……そう、スタートボタンとセレクトボタンになります。以前の真・ポップンコントローラーはDCで稼動させることを前提にして組み上げられているので、スタートボタンしか無いのです。良い機会なので、クリアータイプのきれいなボタンを選びました。
組み上がったものがこちら。内側に補強として取り付けた角材は、すべて木工用ボンドのみで付いています。ですが、重石のおかげでかなりしっかりと食いつきました。この段階でかなりの重量&強度です。
本体の強化による防震、という点はクリアーされたと思います。
納得のいくものが出来そうだ。
前回の失敗も忘れ、徐々に新たな姿を現してゆく真・ポップンコントローラーに私は満足していました。
こちらの画像はおまけ。
左より完成した本体。記念撮影。アクリル接着後にボタンを乗せてみたもの。
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順調に、順調に事は進みました。
しかし、事態は再び暗転します。
2001年、10月に開催された東京ゲームショー……。ここで『家庭用ポップン5』をコナミスタイルの『アーケードスタイルコントローラー』で遊べる、という情報を入手しました。
ウワサのアーケードスタイルコントローラー、初の一般公開です!
値段は三万円、web上で注文が1500台以上集まったら作成開始。発表から製作決定、そして今日まで各ポップンサイトで何度もその名を呼ばれたアケスタポプコン! 商品の発送前に触れることが出来る、数少ない機会の一つ。
触れてみたい。真・ポップンコントローラーをさらなる高みへと進化させることを決意させた、『ウワサのアイツ』に触れてみたい!
それに、アケスタポプコンには様々な疑問を抱いています。
その一つが、「なぜボタンの縁が黄色いのか」というものです。
ご存じの通り、ゲーセンのポップン筐体と真・ポップンコントローラーに付いているボタンは縁が黒いのです。これは一体どういうことなのか。web上でアケスタポプコンの試作品画像を見たときから、ずっと抱いていた疑問の一つです。
あのボタンは決して安くはない。実は違うボタン?
もしや別注ボタンなのか?
叩き心地は本当にアーケードと同じものなのか?
確かめてみたいことがたくさんあります。
そして当日、ライバルと出会うような、旧知の友と出会うような、生き別れの兄弟に会うような奇妙な気持ちで東京ゲームショーへと向かったのでした。
当日のコナミブースが、非常に混み合っていました。それもそのはず、家庭用ポップン5の試遊機は一台しかなかったのです。ですが、列の先に鎮座しているのは紛れもなく本物のアケスタポプコン! 一体、一体どんな完成度なのか。列に並ぶ。特別大きくはないテレビ画面で動くのは家庭用ポップン5。完成度は……かなり高そうだ。一応ロード速度も、DCポッパーから見ても及第点であるように思う。
そしてついに私の番が巡ってきました。
一息ついて、おもむろに本体を10cmほど持ち上げる。重量は約4.2kgと聞いていたが、意外に軽く感じた。これはうちの真・ポップンコントローラーexが未完成の状態でなお、重量が8kgを越えているからそう感じたのかも知れない。裏面には、家庭用ポップンコントローラーに付いていたものと同じと思われるゴム足が6〜8個ほど付いている様子。他の人のプレイの様子を見ていたが、何度かコントローラーがずれていくのを目撃した。だがそれはゴム足に問題があると言うよりも、テーブルの上に白い布をかぶせているからだろう。
さっそくスタートボタンを押し、プレイスタート。いつもの癖で、両側の白ボタンの縁に指先をやる。
その時……すべてを理解した。
一瞬で、すべての謎が解けた。疑問に思っていたことが、すべて連鎖して頭の中で弾けた。
黄色いボタンの縁は……プラスチックではなくポリ製だったのだ!
家庭で使用するコントローラーの一番の問題……それは騒音である。こちらは本体の強度を高め、共鳴する要素を減らし、ソフトタッチでボタンを押すことで対応しようとしたが、アケスタポプコンはさらにその上を行っている。こちらのボタン部分はプラスチック製、ボタンの受け皿部分もプラスチック製。プラとプラが叩き合わされば、それは音も出るだろう。
だがアケスタポプコンはボタンの受け皿部分をポリ製で作ってきた! 完全にしてやられた。これならば何千万円もするような金型を新しく作らずとも、流し込む材料を変えるだけで別部品が出来る。プラとポリならば、叩き合わさってもポリがある程度柔らかいので、騒音を緩和する効果がある。
これが、コナミスタイルが「家庭で使うコントローラー」の解答の形だったのだ。
ボタンを叩く感覚は、微妙にゲーセンのものとは異なったが、このソフトな感覚は確かに家庭用向き……!
なんと言うことだ。家庭用コントローラーの完成度に満足行かず、自らポップンコントローラーを作製しはしたが、アケスタポプコンに比べたらなんと細部の甘いことか。
今日、今日まで心のどこかでアケスタポプコンを「量産型」とみくびっていた。アーケードとは、絶対に違うものだと……! だが、アケスタポプコンはまさに『家庭用コントローラーの一つのかたち』をはっきりと最初から提示してきた。コナミスタイルは初めから「アーケードの複製品」を作るつもりなどなかったのだ。むしろ、むしろ粗末なアーケードの複製品であるのは真・ポップンコントローラーの方ではないか!
三曲プレイし終わった。
プレイの終了を待たずとも、すでに『決着』は付いていた。
「うわああああぁぁ!」
逃げるように、その場を離れる。
「ま、負けたくない、負けたくない、負けたくないいいぃぃ!」
このまま真・ポップンコントローラーexを完成させても意味がないと悟ったよっしー。だが、アケスタポプコンとの出会いにより真・ポップンコントローラーexを進化させる新たな方向を知った。そしてその進化の方向とは!?
次回、「試行錯誤する男」!
乞うご期待!
<第三幕へ>
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