それは電話から始まった
とある客先で仕事をしている時、提督に電話がかかってきた。
「提督さん、会社から電話ですよ。」
客先の女の子は、そう言って提督に電話を回してくれた。
(もしもし、提督さん、○○だけど、出張行かない?)
おお、部長からだ。で、出張? 提督はここの客先と契約中で、そんな簡単に他の仕事はしにくいのだけれど。
「出張ですか? どこに?」
(いや、日本じゃないんだ。韓国なんだけどね。営業の△△君も一緒だし。)
「そーですか・・・。で、内容は?」
(実はね、ブルーインパルス(仮名)なんだ。)
エー、えー、A! ブルーインパルス!? 青い衝撃、別名虎の穴。決して踏み込んでは行けない。そこは地獄の特訓の場所。
「あのー、わたしブルーインパルスは、ちょっと前に行かさせていただいたのですが!」
(うーん、今回はその続きということで。)
ブルーインパルス・・・。それは1997年の10月の終わり。提督はその意味も良くわからず、飛行機に乗り込んだのでした。行き先はアメリカの某所。12時間以上のフライト。国内便に乗り換え更に1.5時間。そこからタクシーで30分位だったかな。その場所は広大な敷地の中にある、教育センター。そこで提督は某有名コンピュータメーカー主催の教育を受けたのだった。その名こそブルーインパルス。
そこに提督は半月程滞在したわけだが、その内容を少しだけお話しよう。ここで語られる話はすべて真実である。
・ここで通じる言葉は英語だけ。日本語など、屁の役にもたたない。
・朝08時00分 講習開始。遅れると罰金として1ドル取られる。
・講習の一番初めに1時間程のテストを受けさせられる。内容はコンピュータに関すること。問題ももちろん英語。成績順に張り出される。
・その後、毎朝前日の内容についての、テストを受けさせられる。もちろん成績順に張り出される。
・講師は機関銃のような英語でたたみかける様に話す。目が点になる。思わずWindows/NTのように固まり、全機能が停止する。
・テキストが英語なのは仕方がない。
・昼休みに日本人が珍しいのか、講師に話し掛けられる。死にもの狂いで話す。(100%能力を出しきっても通じているかどうか怪しい)
・教育センターの飯は、取り放題、食べ放題であるが、死ぬほどまずい。何でまったく味がないか、鬼のようにくどい味かどっちかなんだ。
・講習は夕食をはさんで夜07時30分までである。トホホである。
・講習が終わると、今日のポイントをまとめて提出しろと言われる。日本人である提督は、読むのも書くのも遅いので、殆ど教室を出るのは最後である。
まあ、他にも苦しいことは色々あったさ。で、帰国した時みんなに言ったっけ。ブルーインパルスだけはもう行かないと。でも・・・。部長の誘いである。まあ、業務である。
「分かりました。もし、どーしても他に行く人がいなかったら、私は考えても良いですよ。」
(そう、分かったよ。あ、韓国で開かれるけど、講習はやはり英語だから。)
で、その翌週、会社に帰った時。同僚が話しかけてくる。
「あ、提督さん、またブルーインパルス行くんだって。さすが違うなあ。」
え、まだ行くと決まったわけじゃあ。
「まあね、ブルーインパルスなんて行ったことあるのは君と□□さんだけだからさ、経験を生かさないと。」
会社の同僚達は、この前提督が行った時のブルーインパルスの報告を良く聞いているので、自分が行く羽目にならなくてほっとしているようだ。
「でもね、俺は、どうしても行く人がいなかったら、’考える’と行ったんだよ。」
しかし、世の中はそんなに甘くなかったのである。提督が参加できなかった部のミーティングでは、”提督は喜んでいく”という事になっているらしい。しょうがないなあ・・・。一週間の日程で自由時間も一日ある事だし、一日だけの韓国旅行と思って行こう。そう心に決めるのでした。
韓国って
で、出発の二日前。提督は円をウォンに替えとかなければと思い、東京三菱銀行に向かったさ。
「えーと、円をウォンに替えたいんですけど。」
「当銀行では、円とウォンの交換はしておりません。」
えー、東京三菱と言えば、外為の専門銀行だった東京銀行と三菱が合併した銀行でしょう。そこで扱ってないということは・・・。
「ここにですね、円とウォンを扱っている銀行が記載されていますので、こちらにお問い合わせ願います。」
と、銀行のネーちゃんが一枚の紙切れを渡してくれた。なんだあ、ちゃんとあるのか、良かった。で、その紙切れを見てみると、すべて韓国の銀行の日本支店ではないですか。と、ということは・・・。日本の銀行ではだめだと言う事だね。そこで、すかさず一緒に行く営業さんに事の次第をメールで報告。
「そーなんだってね。でも、大丈夫だよ、提督さん。空港で両替できるから。」
そうか。そうだよねえ。でもさー、韓国は隣の国だよ。2002年にはサッカーのワールドカップを共同開催する国だよ。もっと仲良くしようよ。アメリカみたいに。
これは出発の一日前に書いたレポート。もしかしたら続きの報告があるかも知れない今日この頃です。