よせば良いのに

 それは何日目のお昼だろう。提督達は基本的に研修センター内にある食堂で昼食を取っていた。ところが、その日に限り外で食事をしようという事になった。そこで、外に出てお店を探す提督達。するとそこに『日式』と書いてある看板が・・・。誰かが言う。「日式って、日本式の事だよね。看板には魚の絵も書いてあるし、入って見ようよ。」うーん、確かにこの頃焼肉三昧だし、日本式の料理も食べたいしなあ。ここにしよう。提督達はそう決めると、勇んで入って行ったのさ、その店に。4人がけのテーブルが4組しかないような小さな店だった。テーブルにつき当たりを見まわして見る。おお! 隣に立派な水槽があるではないか。さすが日式、ここには鯛や平目や伊勢海老が威勢良く泳いで・・・いない。何だこりゃ。である。確かに中には魚が泳いでいた。でも、この魚何!? 日本では見たこともないような魚が。何かなまずの大きいようなのや、雷魚のような魚が泳いでる。あ、そうか。これは食用じゃないんだ。観賞用に違いない。きっとそうだ。さ、飯でも食おう。そう思って店内に張り出されているメニューを見てみる。ヤバイぞー、ハングル文字で書かれているから何も読めない。どうしよう。営業さんが店員に英語で話し掛けて見る。全然通じない。あ、もしかしたら日本語が分かるかも・・・。あえなく玉砕。あーあ、日式ならせめて漢字を使ってくれたら読めるのに。しかし、弊社の営業さんは何て偉いのだろう。「メニューを読んでもらえばいいんだよ。日式なら読んでもらえば何の料理か分かるはず。」 営業さんは立ちあがり、張り出されているメニューを一つ一つ指差して行く。店員もこちらの意図をさっしたのか、営業さんが指差すメニューを読んでくれる。だが、全然分からんじゃないか。本当に日本料理屋かここは。それでもいくつか指差して行くうちに、「すし」と発音される料理にぶち当たった。おお・・・、やったぞ。すしだ。どうやら、おすしは二種類あり、安い方が六千ウォン、高いほうが一万ウォン。今までの感覚からすれば少し高い。しかし、一万ウォンでおすしが食べれるならいいじゃないか。提督達は一万ウォンのおすしを、四人前頼んだ。すると、先ずテーブルに各種キムチが並ぶ。それだけで数種類。そうだよなあ。韓国は何はともあれキムチだもの。でも、おすしにキムチって、何かへん。次に天ぷらが登場だ。全然さくっとあがっていない、しなしなした天ぷらだった。でも、一応天ぷらの味はする。ワシントンで食べたパンケーキを衣にした天ぷらに比べれば上出来である。諸君、ワシントンの天ぷらは甘いのだよ。そして、いよいよ大皿に乗っておすし四人前がどーんと目の前に。皿を覗きこむ提督達。何だろう・・・。このおすし。先ずおすしに付きものの、マグロもかつおもいない。イカさんもたこさんもどこかに遊びにいっている。貝さんも見当たらない。かろうじて見たことがある魚は海老さんだけである。あなたたち誰? て感じである。白と黒い身だけのおすし。白といっても、どう見ても鯛や平目ではない。隣の水槽に目を向ける。まさか、お前らかあ。恐る恐る食べて見る。不思議な味である。今までに食べた事のない味だということは確か。そして言える事は、こいつらはすしネタになるような味ではないと言うことだ。お世辞にも生で食べて美味いと思える味ではない。見た目もグロテスクな色だし。シャリも微妙におすしではない味をしている。そう、日本の焼肉が、限りなく焼肉に近い別の食べ物であるのなら、今この目の前にある食べ物は、限りなくおすしに近い別の食べ物である。
教訓。日式は、決して日本の味ではないので、間違えないこと。
お店に張ってあったメニュー


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