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美容室の改築である。計画地は長野県上田市に隣接する丸子町の中心部にほど近い。敷地の前面を県道が通っており、交通量は昼夜を問わずかなりの量になる。既存の建築物は、一般に見受けられる鉄骨と木造の混構造による二階建ての店舗併用住宅であるが、築20年以上を経ており老朽化が進んでいる。また、周囲にはこれといって特徴のない住宅が建ち並んでいる。
今回の改築は、従来から店舗(美容室)として使用されていた部分に加え、和室一間分を新たに店舗に加えて計画するというものであった。クライアントからの要求は最小限のものであり、唯一カットスペースをなるべく広くとりたい、というものだった。そのため、まずカットスペースの位置が決定された。前面道路の境界に沿って、長手方向にカットスペースを設けた。空間の奥行きが最も感じられる配置である。アプローチは、前面道路から少し引き込む形を取り、髪を切るという行為への期待感を高まらせようとした。アプローチと同じレベルにある待合いは、店舗より一段高くなっている。限られた空間で間仕切りなどによる境界の創出は効率の悪いものと考えたからだ。また、この待合いの天井でもある従来の二階のテラス部分には開口部が設けられ、トップ・ライトとして新たな機能が付与された。レジ等が入る壁には、市販用に陳列される商品の寸法に合わせて穴が穿たれ、その一つとして間接照明も組み込まれている。
道路に面するファサードは、自動車での移動と徒歩での移動の全く異なるスピードに対応できうるものとして、異なった構成が重ねられている。自動車に対しては、ファサードの左端に建つ大きな壁によって建物自体の存在をアピールする。それに対し、ランダムに設けられた開口は、歩行者が歩くスピードで楽しめるものとなることを意図している? |