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 十一月九日。韓国に来て三日目。

 この日ばかりは「韓国三大免税店巡り」に参加することにしておきました。バスに乗って、ゆらりと市内の旅。

 でも一店目と二店目は制限時間30分の超特急ショッピング。正直、ブランドものは冷やかし程度にしか見てこなかった。
 三店目でバスの役目は終了。午後五時に「免税店デパート隣のロッテホテル」で全員集合するまで自由時間だ。

 三時間ほどゆっくり出来そうなので、ここのデパート内免税店でお土産を探しました。免税店はパスポートを所有していないと(外国人でないと)買い物が出来ない、という場所であると知ったので、ちょっと意味無くドキドキした。

 一通り買い物を終えて、行動をともにした人々とデパート最上階の喫茶店で一休み。肉以外の食べ物が嬉しい。ここで注文したのが写真の「フルーツかき氷」。値段は5000ウォン(500円)。ていうか高ッ! 完全に観光客向けの値段じゃん! おまけにこのかき氷、変なチェリーがスライスしてあると思ったらプチトマトでした。そうか、ここでは「果物」という判定なのか……。さすが韓国、油断ならねぇぜ。

 あまった時間は周辺でゲーセンを探そうとしたけど、このあたりの街並みはどことなく「銀座」を思わせた。これはさすがにないだろう、と思ったので、ホテルとデパートの周りを一周するにとどめた。
 やはりゲームをできずに韓国を発つことになりそうだ……。

 午後五時。隣のロッテホテルのロビーに上がり込んで全員の到着を待つ。二日目の夜は全員で「カジノ」へ行くというスケジュールなのだ。

 カジノ! しかし、なんと魅惑的な響き! 初めて体験する公営ギャンブル!
 豪奢な建物と内装。クッ、ブルジョワと退廃のスメルが漂うぜ……ッ。

 この時時間を見ようとケイタイ(無論、ここではバリ圏外なので時計代わりだ)を手にカウンタ前を歩いていったら、カメラ付き携帯かどうか訊かれた。みぶりで違う、と言いながら思った。

 そうか。ここは写真撮影禁止なのか。

 是非とも撮らねばな。

 どうやら私はヘボスパイのようだ。

 しかし、まるで映画の世界よ。スロットにポーカー、ルーレットの大卓……係りの者に簡単に遊び方をレクチャーしてもらった。ポーカーやルーレットは現金をチップに替える必要があるが、奥にあるスロットだけは現金(500ウォン硬貨・ウォン紙幣)で遊べるとか。
 いきなり対人ギャンブルは危険と判断。とりあえず「幸運熊猫」とかいうスロットマシンに座った。

 10000ウォン紙幣(千円)を滑り込ませるとクレジットの欄が「20」と点滅した。ここからクレジットを1〜3までの範囲でBETし、スロットを回すらしい。無論、多くBETしていた方が見返りが大きい……。

 BET数3のままガンガンスロットを回しました。いや、だってめんどくさかったから。小さな当たりが出るとやはり嬉しくなるものですが、50000ウォン(五千円)失ったあたりでちょっと冷静になった。一応この金額をボーダーとしていたからだ。

 「いや、ここで引いたらなんにもならねー! おまけにちょっと円をウォンに替えすぎたと思っていたところだ!(ウォン→円はレートが悪い) ならばここでやったるでー!(何を?)」
 10000ウォン紙幣をもう二枚だけ入れてスロットスタート! そしたら気迫が通じたのか、150枚と60枚の当たりが一つずつ。三枚賭けだったのが幸いした。いったん手を休めて冷静になった。今クレジットは260枚ある。1クレジットが500ウォンでおおよそ50円。すると今は一万三千円ぐらいか……。
 よし、クレジットが240まで減ったら止めよう!

 すぐ240になった。

 引き上げ時だ。払い戻しのボタンを押す。楽しげな音楽とともに、スロットが500ウォン硬貨を吐き出し始めた。や、やはりちょっとドキドキする。ご存じの方も多いだろうが、500ウォン硬貨と日本の500円硬貨は大きさがよく似ている。そういう硬貨が実に240枚……すくい上げるとき、やはりハラハラした。背後にも気を付けた(映画ならなんかで殴られる場面だろ?)。
 スロット用カップの三分の二が硬貨で満たされた。両替所で、本当にウォンの札束になった。得難い体験。そう、思った。

 70000ウォン(七千円)突っ込んで120000ウォン(一万二千円)を得た。もうけは五千円分。これでよかったのだ。
 なぜここまで五千円にこだわるかというと、私は日本にいるとき、ただ一度だけパチンコをしたことがあるのだ。その時5000円分のカードを購入し、十分も経たずにすべてを失い、そこで目が覚めて二度とパチンコなどするまい、と心に誓ったのだ。
 そう、ここで得た五千円というのは「巡り巡って帰ってきた」分なのだ。ドキドキ、ワクワクという利子が付いて……。

 リミットが迫っている。ここに居られるのは一時間だけだ。
 ここで試合終了のゴングが鳴ったのは、私にとって幸運であったとしか言いようがない。もう少しここに居たら、気が大きくなっていた私は「もうけ」の分をチップに替えて、緑の卓の上に扇状にカードを広げ「かかってこいよ(人生ってなんだ?)」みたいな顔をした男にポーカー勝負を挑んでいた可能性が高い。

 ゴングに救われたのだ。
 息を整え、カジノを後にした。

 対人ギャンブルを体験するのは、もっと後になりそうだ。

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